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今、世界が注目する新たなテクノロジーの舞台は、モンゴルです。
「モンゴル初のドローンによるフードデリバリー」がついに実現されました。
それもただの配送ではなく、ウランバートル市内から郊外まで往復33kmを飛行するという壮大な実証実験です。
この快挙を成し遂げたのは、日本企業エアロネクストと、モンゴル最大級の投資グループNewcom Group、そして国内最大手のフードデリバリー事業者Tok Tok LLC。
技術と物流の革新が、国境を越えて手を組んだ瞬間でもあります。
なぜ今、モンゴルなのか?
なぜ、食事を空から届ける必要があったのか?
このプロジェクトが示すのは単なる話題性ではなく、渋滞回避・医療物資の応用・災害時対応などにも応用可能な、未来型インフラ構想そのものです。
本記事では、この取り組みの全貌と3つの革新ポイントを中心に、日本のドローン事業者にとってのヒントや、JUIDA資格者が知っておくべきトピックまで深掘りしていきます。
他メディアが報じる事実の羅列ではなく、現場目線と戦略的な視点からの徹底考察をお届けします。
今後、物流・医療・観光など幅広い分野でドローンが不可欠になる中、この実証が持つ意味と可能性を、ぜひ最後までご覧ください。
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モンゴルで実現した“空飛ぶフードデリバリー”の全貌

【注意:当ブログ内の画像は「イメージ画像」となっていますので、ご了承ください。】
プロジェクトの背景と注目される理由
2025年7月、モンゴルで史上初のドローンによるフードデリバリーが実現しました。
この一報は、物流・テック業界の枠を超え、多くのメディアや関係者に衝撃を与えました。
理由は明確です。都市部から郊外へ、33kmを往復する料理の配送というチャレンジは、これまでになかった実証規模であり、かつ生活密着型サービスへの転用という側面で、極めて革新的な取り組みだからです。
このプロジェクトの背景には、モンゴルが抱える社会的課題があります。
そのひとつが、都市集中と郊外のアクセス困難という構造的問題です。
ウランバートル市内では慢性的な交通渋滞が発生しており、効率的な物流網の構築は急務とされてきました。
一方で、郊外では道路が未整備なエリアも多く、配送サービスはコストと時間の面で大きな課題を抱えていました。
そこで登場したのが、ドローン配送という選択肢です。
本プロジェクトでは、日本で「レベル4飛行(第三者上空での目視外自動飛行)」に相当する高精度な自動航行技術を導入し、地上ルートでは難しい“空の直行便”を可能にしました。
たとえば、都市中心部から郊外の保養地まで、山道を車で1時間かかるルートが、ドローンなら約23分で到達します。
これが単なるスピードの話ではなく、医療・災害・緊急支援のインフラとしても機能し得る可能性を示したのです。
主要プレイヤーの紹介:Newcom Group・Tok Tok LLC・エアロネクスト
この試験飛行の成功には、3社の国際連携が欠かせませんでした。
まず中核を担ったのが、Newcom Group(ニュコム・グループ)です。
モンゴルで30年以上の歴史を持つ投資・事業グループで、通信・不動産・再生エネルギーなど多岐にわたる業界で革新を続けてきました。
同グループの子会社であるMongolian Smart Drone Delivery LLCは、モンゴル国内で初めて商用ドローン飛行ライセンスを取得した企業であり、運航ノウハウと現地適応力に強みがあります。
そして、料理の提供と注文インフラを担ったのがTok Tok LLCです。
モンゴル最大手のフードデリバリー企業であり、地元レストランとの強いネットワークを持ちます。
彼らが保有する注文アプリや配送データは、ドローン配送との連携を可能にする重要な基盤となりました。
技術提供は日本企業株式会社エアロネクスト。
同社は次世代物流の社会実装を目的とした戦略子会社「NEXT DELIVERY」を通じて、日本の地方でもドローン配送の定常運航を進めている実績があります。
これまでの蓄積を活かし、今回のような高低差200mを含む複雑な地形への自動航行ルート設計にも対応しました。
試験飛行の詳細データ:距離・所要時間・使用機体・搭載メニュー
今回の実証で使用されたルートは、ウランバートル市役所の駐車場から郊外の研修・保養施設「サマーハウス」までの片道約16.5km。
往復で33kmのルートを、第三者上空を通る自動航行で約46分で飛行しました(片道23分)。
離陸地点と着陸地点の高低差は約200mとされており、安全かつ安定した飛行には高度な制御技術が求められました。
配送に使用されたのは、株式会社ACSL製のマルチユースドローン「PF4」。
最大積載重量5kg、最大飛行距離40kmの性能を持つこの機体は、モンゴルの広大な地形や気象条件にも適応できるよう設計されています。
搭載された料理は、人気レストラン「KIBO」の料理6品(総重量2,420g)。
それぞれがデリケートな温度・湿度管理を必要とするメニューであり、配送品質の高さが実証された形です。
使用ドローン「PF4」の特徴と性能
PF4は、安定性と積載量の両面で優れた性能を持つ国産ドローンです。
一般的なドローンに比べ、風速や気温の変動に強く、GPS精度の補正技術が搭載されている点が評価されています。
また、機体制御において冗長性を確保しており、飛行中のトラブル発生時にも安全に帰還可能な設計となっています。
これは、緊急医療輸送などに応用する際に非常に重要な要素となります。
往復33km飛行ルートの地形と課題
ルート上には高低差200mを含む丘陵地帯や、河川、空撮可能な空き地が点在しています。
このような複雑な地形でも安定した飛行が可能だったのは、河川上空ルートを選定することで住宅密集地を回避した工夫が背景にあります。
これにより、第三者への安全確保を担保しながら、現実的な運用モデルとして成立しました。
すでに始まっていた他ユースケース(血液・郵便)との違い
今回のプロジェクト以前にも、モンゴルではドローンを使った物流試験が行われていました。
代表的なものとして、血液製剤の定常配送(2025年5月〜)や、モンゴル郵便との連携による書類・荷物配送が挙げられます。
これらは主に“ライフライン”としての側面が強く、スピードや距離よりも“正確さ”が求められるものでした。
しかし、今回のフードデリバリーは違います。
ユーザーが注文し、食事を楽しむという体験価値までを提供する点で、エンタメ性・サービス性が極めて高いのです。
いわば、これまでの「必要な物流」から、「欲しい体験」へと、ドローンの社会的役割が進化した象徴といえるでしょう。
この進化が、今後他国でも展開されていくかどうかは、まさに注目すべきポイントです。
3つの革新と生活インパクト

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1:物流革命としての革新|都市部から郊外まで繋ぐ空のライフライン
モンゴルで実現したドローン配送が持つ最も大きな意義は、「都市から郊外を直接つなぐ“空の道路”を作り上げた点」にあります。
特に注目すべきは、従来の交通網ではアプローチが困難だったエリアに、安定した物流手段が生まれたという事実です。
これは単なる技術の実証ではなく、生活圏の再定義とインフラの拡張を意味します。
渋滞回避・インフラ未整備地域への対応
ウランバートル市内の慢性的な交通渋滞は、日常的な配送業務に大きな影響を与えてきました。
配達遅延が発生すれば、飲食店や小売、さらには医療関係者にとっても致命的な問題になります。
加えて、郊外には舗装すらされていない道路が多く、車両による配送は非効率かつ高コストになりがちでした。
そこに登場したのが、地上の制約を一切受けないドローン物流です。
空路による直線ルートを確保することで、平均40〜60%の配送時間短縮が実現され、日常的な物資輸送の選択肢として注目されています。
日本の過疎地物流との共通点と相違点
この取り組みは、日本が直面している「過疎地の物流問題」とも密接な関係があります。
たとえば、離島や山間部への配送においても、人員不足・非効率・高コストという三重苦を抱えています。
モンゴルの地形と交通インフラの状況は、日本の中山間地域と多くの共通点を持っており、今回の成功は日本にとっても“転用可能な未来像”を描いています。
ただし、日本は法規制が厳しく、レベル4飛行の普及にはさらなる制度整備と社会的合意が必要です。
一方、モンゴルは行政と民間の連携に柔軟性があり、こうしたプロジェクトがスピーディーに実現できた背景があるといえるでしょう。
2:生活サービスとしての進化|出来立て料理が空を飛ぶ時代
ドローンが物流だけでなく、人の「感情」や「体験」にも介入し始めていることは見逃せません。
今回のプロジェクトでは、注文された料理が空を飛んで届けられるという、まさに近未来の光景が現実のものとなりました。
それは単なるスピードの話ではなく、ユーザー体験そのものを革新する一歩です。
ユーザー体験向上と食の新しい価値提案
従来のデリバリーサービスでは、道路状況や配達員の状況に左右される不確定要素が多く、届いた料理が冷めていたり、時間が読めなかったりする問題が頻発していました。
ドローン配送では、配送ルート・時間がプログラム管理されているため、誤差のない正確な配達が可能です。
今回の実証で使用されたレストラン「KIBO」の料理は、繊細な温度管理が求められる創作料理であり、それが適温で届けられた点は極めて象徴的です。
つまり、料理の美味しさを最大限に活かす配送手段として、ドローンは理想的なポジションを獲得しつつあります。
レストランKIBOとの連携が示す可能性
「KIBO」は、日本食をベースに独創的なアプローチを加えたレストランで、現地の若者や観光客からも高評価を得ています。
この飲食店とTok Tok LLCが連携し、“空の食卓”という新たなライフスタイルを提案したことは、今後の飲食ビジネスに大きな影響を与えるでしょう。
特に都市部に比べて外食の選択肢が限られる郊外エリアにおいて、「出来立ての料理を自宅で楽しめる」という体験は極めて新鮮です。
これは、今後フードトラックならぬ「ドローンキッチン」などの新サービスが生まれるきっかけになるかもしれません。
3:国際展開モデルの確立|“モンゴル発”で世界に広がるドローン配送
今回のプロジェクトが示すもう一つの重要なポイントは、ドローン配送が“国際輸出可能なビジネスモデル”になり得るという事実です。
従来、日本が得意とするハードウェアや技術ノウハウは、海外展開において法制度の違いや環境要因に阻まれることが多く、輸出が難しい領域とされてきました。
しかし、今回のように地元企業(Newcom Group)と連携し、地域課題を解決するパートナーとして技術提供する方式であれば、その障壁は大きく下がります。
Newcom Groupのビジョンと海外戦略
Newcom Groupはすでに電気通信分野でアジア圏への技術支援・事業展開を進めており、ドローン配送もその一環として本格展開を目指していると発表しています。
特にカザフスタン、ウズベキスタンといった近隣国では、モンゴルと同様に物流・医療分野での課題が深刻であり、そのニーズに応える形での導入が視野に入っています。
これはドローンそのものだけでなく、運用設計・データ管理・安全評価手法を含めた「ソリューション」としての輸出が可能であることを意味しています。
日本のドローン事業者にとっての教訓と学び
この事例から、日本のドローン事業者が学ぶべきは、単独での技術開発だけでは限界があるという点です。
むしろ、地域の実情を理解した現地企業との共創により、現場に最適化されたオペレーションと社会的受容性の獲得が鍵となります。
また、プロジェクト単位での成功体験を蓄積し、他国・他地域への展開可能性を探る“パイロットモデル”としての思考も必要です。
モンゴルでの成功は、こうした戦略的アプローチが奏功した代表例であり、日本のドローン業界が次に向かうべきヒントが詰まっています。
まとめ:フードデリバリーを超えた“次の社会インフラ”へ

【注意:当ブログ内の画像は「イメージ画像」となっていますので、ご了承ください。】
今回の実証が示したことと今後の可能性
モンゴル初のドローンによるフードデリバリーという挑戦は、ただ話題性のあるプロジェクトでは終わりませんでした。
この実証が持つ意味は、単に料理を空から届けたというだけではなく、次世代インフラの可能性を具現化した一歩だったからです。
都市部の渋滞、郊外のアクセス困難、生活圏の拡張といった問題を、空路という選択肢でどう解決できるかを試したこの実証。
結果として、ドローン物流は時間短縮・コスト効率・安全性をすべて高水準で両立できる手段であることが証明されました。
また、それはフードデリバリーにとどまらず、医療・災害支援・公共インフラとしての応用にもつながる汎用性を秘めています。
重要なのは、これが“終わり”ではなく、始まりに過ぎないという点です。
今後、空を使った移動・輸送・支援が当たり前になる時代に向けて、私たちはその活用方法をさらに磨き、実際の暮らしにどう結びつけていくかを考えるフェーズに入っています。
エアロネクスト×Newcom Group連携の意味
本プロジェクトを実現させたのは、技術力に優れた日本企業エアロネクストと、現地課題を熟知したNewcom Groupの強力な連携です。
この連携は、技術だけで何かを変えられる時代ではないという現実を突きつけています。
いかに現地ニーズに応えられるか、そして行政・社会と共に歩めるかが成功の鍵であり、この2社の取り組みはその模範と言えるでしょう。
エアロネクストが提供したのは、単なるドローンではありません。
地形解析、飛行経路設計、安全対策、オペレーション全体を含めた、ドローン物流の総合的ソリューションです。
それをNewcom Groupが現地に即した形で実装し、ユーザー体験と社会的インパクトにまで昇華させたことこそ、今回の最大の成果です。
国境を越えたパートナーシップの在り方としても、非常に示唆に富んだ連携であり、今後、日本企業が海外展開を進めるうえでの大きなヒントになるのは間違いありません。
日本における応用と、JUIDA資格者が今こそ知っておくべきポイント
では、この事例から日本は何を学び、どのように活かすべきなのでしょうか。
答えは明確で、今後の日本社会における「空の社会インフラ」構築に、ドローンは不可欠であるということです。
過疎地への物流、災害発生時の即応体制、医療物資の緊急搬送など、ニーズはすでに明らかであり、あとはそれを実行できる人材と仕組みが必要なのです。
ドローン×地域課題解決の将来性
たとえば、離島や山間部など、従来の物流が届きにくい地域においては、ドローンが命綱になる可能性があります。
モンゴルのように広大な土地ではないにせよ、日本でも交通インフラが脆弱な地域は数多く存在します。
それに対して、補助者なしの目視外飛行(レベル4)が解禁されてきた今、制度と技術の両輪が揃いはじめています。
つまり、実現可能性はすぐ目の前にあるということ。
そして、そこにJUIDA資格者が果たせる役割は非常に大きい。
ただ操縦ができるだけではなく、地域課題を読み取り、適切な導入計画を提案できる人材こそが、これからの“価値のあるドローン人材”なのです。
資格・技術だけではなく“発想力”が問われる時代へ
モンゴルの事例が証明したのは、「前例がないことでも、やり方次第で社会は受け入れる」という事実です。
これは資格や技術以上に、課題解決への視点と発想力が重要になるということを意味します。
空撮ができる、目視外で飛ばせる、危険回避ができる──それらはすでに“前提”になりつつあります。
むしろ、これからは「何のために飛ばすのか」「誰のために飛ばすのか」を明確に描けるかどうか。
それが、ドローン業界で生き残る人材の条件です。
モンゴル初のドローンによるフードデリバリーの成功は、私たちにたくさんの問いと可能性を投げかけてくれました。
それに応えるのは、今この記事を読んでいるあなたかもしれません。
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